映画と家の日記 その他⑨

月曜日

昨日までの楽しさが嘘だったようにやってくる月曜日で、憂鬱だった。

家に帰って早速『ジェームズ・ディーンにさようならを』を見る。ジェームズ・ディーンの命日に、彼の熱烈なファンである若者たちの一日の出来事。主人公には彼女がいるが、同じくジェームズ・ディーンを好きなゴスメイクをした元彼女がいる。このゴスメイクをした少女が最後に火傷をしてしまって、一日は幕を閉じる。切ないのが最後の部分で、主人公がゴスメイクの彼女を見舞うシーンだ。主人公は相変わらずジェームズ・ディーンに夢中で、『理由なき反抗』の話をまくしたてるように彼女に話すが、彼女は悲痛な表情を浮かべるばかりである。この映画ごっこをやめられない主人公に共感を覚えた。最後にバイクで地元から出発し、街の小さな映画館がうつって映画は終わる。

 

火曜日

家に帰ってジェームズ・ブリッジスの『マイクス・マーダー』を見る。あまりに淡々としてるので途中で何度かうとうとしてしまって休憩を入れつつ見た。マイクというチンピラとその恋人であるデボラ・ウィンガーが何度か会って別れてを繰り返すが、マイクは殺されてしまう。ここまでしっとりとしているが、打って変わってデボラ・ウィンガーとマイクを殺したチンピラとのスリラーに展開していく。いかがわしい世界観が素晴らしくて、ガムテープでぐるぐる巻きにされた死体が投げ捨てられるところなどコーマック・マッカーシーの小説のようだ。最後は最後でまたしっとりとした雰囲気でピアノを弾いているデボラ・ウィンガーで終わるという異色作だった。

夜になって、T君に貸したアイヴァン・パッサーの『クリエイター』をなんとはなしにちょこちょこ見てたらやっぱりいい映画だなとしみじみ思う。

 

木曜日

バイト納め。無事に仕事が終わって、Planet+1でフランク・ボーセイジの『歴史は夜作られる』を見る。二人が出会ってから朝までダンスし続けるという運命的なはじまりから、最後にはタイタニック号のような遭難事件があって二人は結ばれる。この最後は、今だといわゆる超展開かもしれないが、映画を見ているとそんなことどうでもよくなるぐらいロマンに溢れている。

それから、元町映画館に行ってハッピーアワーチームの忘年会があった。終電まで飲んでいたが、あっという間だった。濱口さんは今はどういう世界にいるんだろう。北国の帝王と戦っているんだろうか。

 

日曜日

今日もこもりきりだった。またしても映画を4本見た。

最初に『ナイトメア』。精神病院を出た男が殺人を犯してく。朝の起き抜けに観る映画ではなかった。

次に『SO SWEET, SO DEAD』。ジャッロ映画である。昼のテレ東のような気怠い雰囲気の映画で、何度か寝てしまう。あまり記憶に残ってないが、悪くはなかったように思う。

さらに『ロング・ウィークエンド』。ようやっと見れたカルト映画である。大自然を舞台にして、夫婦の不和がどんどん大きくなっていく。心理的な恐怖が、オーストラリアの大自然と結びついていくのが面白い。

最後に『インパルス』。ソンドラ・ロックの監督作品である。映画を見初めて冒頭からしっとりしたニューヨークの夜の街並みが素晴らしくて、それだけでも見て良かったと思った。内容は堂々としたアクション映画で、ソンドラ・ロックの監督としての才能も感じた。

妹夫婦は昨日で帰ってしまったので、おせちの残りと少しだけお雑煮を食べる。

 

金曜日

TOHOシネマズ梅田『スパイダーマンノーウェイホーム』を見る。スパイダーマンシリーズの歴代のヴィランたちと部屋でわちゃわちゃするくだりとか完全にウトウトしていて記憶にない。マリサ・トメイの最後の勇姿はしっかり見れた。ネタバレになるが、アンドリュー・ガーフィールドやトビー・マグワイヤが登場するところはやはり観客がどよめいていた。今回のスパイダーマンで分かったのは、トム・ホランドスパイダーマンは青臭い。行動原理があまりに単純過ぎる。自分の意思みたいなものが他人の言葉ですぐに変わってしまうあたりがあまりにも弱い。これから、成長していく過程が描かれるのだろうか。

家に帰って、エレイン・メイの『ふたり自身』を見る。チャールズ・グローディンが主演で、新婚にも関わらず金髪美女に恋する話だ。後半になってチャールズ・グローディンが本当に離婚してしまって金髪美女のシビル・シェパードに迫るあたりどうなるかと思ったが、二人が最終的に結ばれてしまうあたりが意外だった。チャールズ・グローディンのなんとも言えない顔で終わるのが良かった。

 

土曜日

神戸映画資料館にクラコメを見に行く。資料館に着いたらKさんが既にいて、チケットを書い終わったらずっと話していた。

最初に斎藤寅次郎の『誰よりも金を愛す』。三木のり平のドタバタ喜劇で、今日見た中では一番面白かった。幽霊まで出てきてなんでもありのドンチャン騒ぎは正月映画のようで見ていて楽しかった。

次に『南瓜おやじ西部へ行く』。正直、感想があまりない。ゆったりとした西部劇で、まったりとしながら見た。

最後に『ファイ&ビー海辺の旅』。デンマークのサイレント喜劇。「ファイ&ビー」という「ローレル&ハーディー」のような二人組が出てくる。本筋が恋愛でもので、「ファイ&ビー」の話はサイドストーリーのようだった。デコの広いヒロイン、不気味だった。

家に帰ってエレイン・メイの『イシュタール』を見る。ダスティ・ホフマンとウォーレン・ビーティーが下手くそな歌で最高で明るい気分になる。続けてマイク・ホッジスの『狙撃者』を1時間ぐらいまで見て、途中で止めて寝る。

 

日曜日

朝起きて早速『狙撃者』の続きを見る。一度寝てしまったので面白さが半減してるような気がする。映画は一気に見た方がやっぱり面白い。

見終わってからシネ・ヌーヴォで一番見たかった三隅研次の『千姫御殿』をやっていることを知って、ショックでVHSで持っていた『千姫御殿』を見る。完全にトリミングされていて、フィルムのロールチェンジの度に黒みが入る海賊版のようなVHSだった。映画はめっちゃ良かったが、やはり三隅の撮る画はVHSじゃなくてフィルムで見たかった。

続けてジェームズ・ブリッジスの『パーフェクト』。エアロビクスが題材というだけあって踊っている場面が多いが、本筋はジャーナリズムについてのドラマだ。ジョン・トラヴォルタの潜入ルポがあくまでもメインのストーリーだが、それにしてもとにかく踊っているのでそちらの印象の方が強く残ってしまう。

次にAmazon Primeで『団鬼六美教師地獄責め』。昨日、Tさんに勧められたので見ることにした。主人公が田舎で教師を始めるのだが、という話で、予想外の展開が続いて、流石に面白かった。主人公には誰にも味方はおらず、周りには変態だらけという状況が怖い。最後のオチにもぞっとする。

最後にフランク・ペリーの『わが愛は消え去りて』。英語字幕が付いているのだが、あまりダイアローグは分からなかった。それでも、主人公のキャリー・スノッドグレスが良くて、ひたすら男性に虐げられる主婦を演じている。最終的に誰からも裏切られて、空虚な表情でグループセラピーに出ているキャリー・スノッドグレスのアップを映したままエンドクレジットが流れるというなんとも言えない終わり方。

5本も映画を見て疲れたので、夕飯を食べてすぐに眠る。